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第一回



現時点でのライフワークなので、おめでたいといわれてもいいから、この本を出した背景についてお話します。あわせて、本にかけなかったこと、頁数の関係で削除したところなど、ホームページで何度かにわけて掲載します。

 
第一回:背景事情

 専門的な本としては、ほぼ10年ぶりのもので、できはともかく、いつもと別の種類の力がはいった。くしくも、10年弱前に出した「人材ポートフォリオ戦略」と同じ東洋経済新報社からとなった。当時、編集担当だった清末さんが、部長になられていたことがある意味でラッキーだった。担当者には、若くて回転のいい島さんをあててもらった。
 さて、人材マネジメントについての基本的考え方について、僕の師匠は、おそらくワトソンワイアットの前の東京支社長の高橋俊介さん(現、慶応大学教授)で、彼の人材マネジメント論のグローバル版という位置づけにしてもらったことは、おさまるところにおさまりつつ、非常に名誉なことだと受け止めている。
 この本を書き始めたのは、2004年の夏のことだ。僕はそのころ、上海にすんでいて、ワトソンワイアットの同僚の河合さんから、確か、メールと電話で、あるクライエントのグローバル化について相談を受けたのがきっかけだった。それを受けて、僕は、そのクライエントの社長のYさんというグローパット人材(本書でも名前をだしている)をイメージしながら、自分の考え方を手紙のかたちで書き始めた。その作業の中で、自分がずっとやってきたことをまとめつつ、それでは、まったく足りないことを実感した。たしか、それはA4で10ページくらいのものになった。
 そのときの考え方の根っこに、すでに、「内発的な国際化」という本書の第5章で展開する考え方があった。
 そして、その考え方自体は、日本を代表する食品メーカーA社のプロジェクトで明確になったものだ。これは、ワトソンワイアットの淡輪社長、永田稔さん、鈴木康司さん、と一緒に考えたものだ。そして何より、A社の海外人事で部長だった加賀谷さん(現在は、同社のマニラの現地法人の社長)が、我々の考えに共鳴し、採用してくれたことが大きかった。
 そのように、きっかけは、突発的だがスムーズだった。それで、僕は、これは結構簡単にかけそうだと錯覚した。その錯覚がなくて、はじめから、これを書く苦労がわかっていれば、書き始めなかったかもしれない。苦労の源泉は、僕の専門分野かもしれない、という意識だった。そのために気張ったし、欲張ったのである。

1)まず、教科書的なものにしたい、というのが初めからあった。
2)同時に、システム論として人材・組織を語ってみたいという欲求があった。
3)何か、新しいコンセプトを提案したかった。それも、できれば、ややっこしいコンセプトではなくて、コロンブスの卵みたいなコンセプト、つまり、いわれてみればその通り、みたいな気のきいたものをだしたかった。

 1)は、もともともそうだったが、東洋経済新報社のかたとの話の中で、高橋俊介さんの名著「人材マネジメント」のグローバル版として位置づけるというところに生かされた。
ほんとうは、第三章の組織論のところは、もっと教科書的に解説したいと思ったがそれは頁の関係その他でできなかった。これは、このホームページでこれから書き足したいと思う。
 2)は、第一章に、少し顔をだした。社会システム論のルーマンまではいかずとも、人材流をキーコンセプトとして、とにかく流通させることが大切という立ち場をうちだしてみた。
きれいに流れをつくって、流れを維持すればよどまない。流れがないところはどんなにいい仕組み、いい人材をそろえても、いずれはよどむ。それが僕が、組織とつきあいながら、体で覚えた原則である。もちろん、流れすぎると、何もおきないことも事実だ。適度な流れ、スピード、それが大切ではないか。
さらに、これは、まだこの本ではそこをつけていないのだが、「人材の動き」のところが、企業経営の「本番」、「最前線」ではないか、という僕の基本認識があって、そこから、すべてを組み立てて、説明したいという欲求がある。従来、戦略→組織→人材という流れで、人材のところは下流になっていたが、それは逆ではないか、すべては、人材の動きからみるべきではないか、といった気持ちもある。このあたりの気持ちは、これから、ブログで強味論や力能論としてだしていく(また、あるところから今年の夏に、新書で、その大枠を本にして出す企画が進行中だ)。
 3)は、「内発的国際化」というコンセプトをだしてみた。これは、本書の第四章と第五章で正面からとりあげた。さらに、「内発的国際化=価値の伝道」のビークルが組織であり、それを第3章でかき、そのビークルにはいって染まるのが人材でそれを1章でかき、そして、それがうまくいったかのシグナルが第2章である。つまり、本書は、すべて「内発的な国際化」をするための本となっている。
(なお、そのあたりをもろに書いた、「幻の序文」があるので、それは、おいおい、このホームページに掲載したい。)
 フロイト的にいえば、
  ・ロゴスとしての父=強み・価値
  ・それを身につける、模倣する息子=人材
  ・息子が父をまねる場としての母=組織、器
という三位一体の構図がそこにある。



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